「何か欲しいものある?」
会計の途中、隣で静かに待っている妹に声をかける。
妹は驚いたようだったが、すぐに首を振った。
「じゃあ、他を回りながら欲しいもの探しましょ」
私の笑顔につられてか、まどかの頬が少しほころんだ。
店員が金額の書かれた値札を私の方へ、差し出した。
「103万円になります」
「ひゃくさっ…」
思わず出た言葉を、ごほごほと咳でごまかす。
「大丈夫ですか?」
「え、ええ。ごめんなさい」
いつの間にか近くにいた平松が、水のペットボトルを渡してくれた。
(103万?このちっこいバッグが?まどかのワンピースより値が張るとか、何か癪だな)
再度ブラックカードを出し、プレゼント用に包んでもらう。
「私は、奥様にご報告してきます」
平松が静かに言った。
「ちょ、ちょっと待って。ご報告って…」
私は慌てて平松を呼び止める。平松は瞼を伏せ、首を横に振った。
「まどか様がご一緒だったことは伏せておきます」
(ナイス、平松)
その後ろ姿を見ながら、まだ平松が自分の味方であることに安堵の息を漏らした。
「さ、今度はまどかの買い物ね!」
プレゼント用に丁寧に包まれたショッピングバッグを受け取った時、ちょうど戻ってきた平松が言った。
「お嬢様、申し訳ございませんが。そろそろまどか様の習い事のお時間です」
「え、そうなの?」
店の外に向かいながら、私は妹に尋ねた。妹は俯き加減に頷いた。
「習い事は何時から?」
「14時からです」
妹の代わりに平松が答えた。
モールの中心部になる広場にある大時計に目を向けると、もうすぐ13時になるところだった。
「でも平松。私たちランチもまだだし、まどかの買い物も・・・」
「ランチは私が買います。今日はここまでにしましょう」
(お前は、秘書か!)
妹に視線を向けると、平松に同意するように頷いた。
「今日はこれで終わりにします」
「でも・・・」
「お嬢様。まどか様が習い事に遅れたと報告があれば、奥様が激怒する相手はお嬢様ですよ」
(それは、平松が黙っていればいい話じゃ・・・)
「私以外にも報告者がいることをお忘れなく」
私の心の内を読んだのか、平松が冷静に言った。
(エスパー)
「・・・仕方ない。今日のところは、私が折れてあげる」
小さくため息を吐き、それから無表情の妹に向かって笑顔を向けた。
「近いうちにまた買い物しましょう」
会計の途中、隣で静かに待っている妹に声をかける。
妹は驚いたようだったが、すぐに首を振った。
「じゃあ、他を回りながら欲しいもの探しましょ」
私の笑顔につられてか、まどかの頬が少しほころんだ。
店員が金額の書かれた値札を私の方へ、差し出した。
「103万円になります」
「ひゃくさっ…」
思わず出た言葉を、ごほごほと咳でごまかす。
「大丈夫ですか?」
「え、ええ。ごめんなさい」
いつの間にか近くにいた平松が、水のペットボトルを渡してくれた。
(103万?このちっこいバッグが?まどかのワンピースより値が張るとか、何か癪だな)
再度ブラックカードを出し、プレゼント用に包んでもらう。
「私は、奥様にご報告してきます」
平松が静かに言った。
「ちょ、ちょっと待って。ご報告って…」
私は慌てて平松を呼び止める。平松は瞼を伏せ、首を横に振った。
「まどか様がご一緒だったことは伏せておきます」
(ナイス、平松)
その後ろ姿を見ながら、まだ平松が自分の味方であることに安堵の息を漏らした。
「さ、今度はまどかの買い物ね!」
プレゼント用に丁寧に包まれたショッピングバッグを受け取った時、ちょうど戻ってきた平松が言った。
「お嬢様、申し訳ございませんが。そろそろまどか様の習い事のお時間です」
「え、そうなの?」
店の外に向かいながら、私は妹に尋ねた。妹は俯き加減に頷いた。
「習い事は何時から?」
「14時からです」
妹の代わりに平松が答えた。
モールの中心部になる広場にある大時計に目を向けると、もうすぐ13時になるところだった。
「でも平松。私たちランチもまだだし、まどかの買い物も・・・」
「ランチは私が買います。今日はここまでにしましょう」
(お前は、秘書か!)
妹に視線を向けると、平松に同意するように頷いた。
「今日はこれで終わりにします」
「でも・・・」
「お嬢様。まどか様が習い事に遅れたと報告があれば、奥様が激怒する相手はお嬢様ですよ」
(それは、平松が黙っていればいい話じゃ・・・)
「私以外にも報告者がいることをお忘れなく」
私の心の内を読んだのか、平松が冷静に言った。
(エスパー)
「・・・仕方ない。今日のところは、私が折れてあげる」
小さくため息を吐き、それから無表情の妹に向かって笑顔を向けた。
「近いうちにまた買い物しましょう」


