美澄とは中学は違ったけれど、美澄は私を知っていたし、私も美澄を知っていた。

それは地区大会の時、よく同じ会場で試合をしていたからだ。


初めて美澄を見たのは、中2の夏。夏季大会、なんとなく男子のトーナメント表を見せてもらったら、〝美澄〟と、綺麗な文字を見つけて。その名前だけが浮いて見えた。そして、こんなに綺麗な苗字が存在することに驚いた。

しかも、初戦でうちの男子が試合をするコートの隣で、彼の試合が行われると知ったから。どういうひとなのかちょっと見てみよう、と。そんな感覚で、男子の応援をしに行った。


そしたら。



綺麗なフォーム、鋭いサーブ。そしてどんな球でも拾う根性と瞬発力、そして何よりも安心感。

このひとが後ろにいてくれたら、私たち前衛は安心して動けるだろうな、と。いつの間にか自分の学校の男子の試合よりも、隣のコートの試合に釘付けになっていた。


結局美澄のペアは、その大会で優勝した。


それ以降、男子と会場が被るたびに、私は美澄を探していた気がする。ずっと見ていられるほど、美澄のフォームはとにかく美しかったし、あのずっと続くラリーも見たかったから。


もし自分が男なら、このひとと組みたいなって。ありえないことを、ひっそりと思ったりもして。



だから、高校で再会した時はほんとにびっくりした。再会と言っても一方的に私が知っていただけなので、ほぼ初対面と同じなのだけれど。中学の時のことはしばらくは言わないでおこうと、黙っていた。


でも、『山田さんって中学でやってたよね?』と。まさかの美澄からそう聞かれて。あやうく心臓が飛び出そうになった。


どうやら美澄も、私の試合を何回か見ていたらしい。