ホワイトボードに貼られた何枚かの写真。新人戦、夏合宿、そして、この前の引退試合。記念にみんなで集合写真を撮っては、こうしてこのホワイトボードに貼っていた。男子の部室にも、同じものが貼ってあると思う。


私の写る位置は、決まっていちばん右か左の端っこだ。男子も女子もユニフォームや練習着を着ている中で、私と、1個下の玲奈ちゃんだけはいつもジャージ。



「……楽しかったな」



2年半にも満たない、当たり前だった日々。それが当たり前じゃなくなった途端、すごく、自分の中の何かが欠落してしまったみたいで。


新学期が始まる前に、そんな当たり前ときちんとお別れをしようと。だから夏休み最後の今日、こうして、この場所に来てしまった。



きっとそれは、美澄も同じなのだと思う。



「はは、」



写真の中の美澄があまりにも爽やかだったので、思わず笑ってしまった。最後の大会、3年はほとんど泣いたあとの目をしているのに、美澄だけは、いつもの顔で笑っている。この男が泣いているところは、1度も見たことがない。

もしかしたら引退する時は見れるかも、と。そう思っていたのに結局見れなかったことが、実はちょっとだけ悔しい。



部室を出る前、〝ありがとう〟と、ホワイトボードの端っこにたったひと言そう書いた。

これもいつか、消されてしまうだろう。この写真も、別のメンバーのものに変わる日が来るだろう。そして、私たちなんかいなかったみたいに後輩たちはここで日々を過ごしていくだろう。



だけど、それでいい。

そうやってみんな、ここを卒業していったのだから。