青を溶かす




新学期が始まって、数日後の帰り道。コートに向かわない放課後にも、案外すぐに慣れた。

玲奈ちゃんがわからないことがあれば連絡をしてくるので、ほんのすこーしだけ、まだ部活をしている気分だ。


きっと、こういう連絡が来ることも、なくなっていくだろう。そんな日が来るのが嬉しいようで、とてつもなく寂しい。






校門を出てしばらくは足元を見て歩いていた。その視線を上げて、前を見る。すると数メートル先に、見慣れた背中を見つけた。


美澄だ。



声をかけようか、かけないか。そんな微妙な距離。数秒迷っていれば、私の横を後ろから甘い香りが通り過ぎていった。








「蒼あお〜〜っ!」



栗色の長い髪の毛を靡かせて、その子が呼んだ名前。


蒼。美澄の、下の名前。



美澄の腕に、その子の腕が絡んだのを見た瞬間、声をかけなくてよかったと安堵した。

同時に、ちくりと、感じそうになる前に、大きく息を吸って誤魔化した。










――『美澄はさあ、彼女との時間が増えるね』






知らなくていい。

この先ずっと、知らなくていい。