一時滞在していた街を出発して、またテントを張って野営する旅へと出発した私たち一行。

 私にジュリアスの過去を話してからの馬鹿王子エセルバードは、少々様子がおかしい。なんなの。良くわからないけど、なんだか不気味。

 最近はジュリアスが呼ばれて居ない時を見計らって、私の元へとちょくちょくやって来るようになった。

 しかも、これまでに繰り返された暴言など何もなかったかのような、良くわからない好意めいたものを向けられているのを感じる。

 だから、ジュリアスが団長代理のハミルトンさんに急用で呼ばれて、一人で夕食を取ろうとしていた時にも……私はなんとなく「そろそろ、三歳児が来るんだろうな」と、なんだか冷めた気持ちで居た。

「おい。そこのお前」

 さっきの予想通りエセルバードの声が聞こえたし、これはきっと私の事なんだろうなと思った。

 けど……無視する。

 私。そこのお前さんじゃないから。名前でちゃんと呼ばれたら、別に振り向いても良い。

「おい!」

 黙々とご飯を食べていたのに肩をぐいっと強く引っ張られて驚きはしたけど、怒りの感情は浮かんで来なかった。

 実際のところ馬鹿王子に対して、私は諦めの気持ちが強い。

「あの……何の用ですか?」

 冷めた口調で彼に問いかければ、エセルバードはいかにも不機嫌そうに言葉を放った。