「えっ……」

「聖女様……大丈夫? ……え」

 若い男性の声に驚いたのか、間近に居た私のぽかんとした顔を見つめつつ自分の喉へとパッと手を当てた。

 その時に自分の手が視界へ映ったのか、団長は続けて手のひらや手の甲をまじまじと見ていた。

 彼につられて私も視線をそちらへ目を向けると、さっきまで年齢相応の筋張っていた男性の肌だったのに、その手は肌艶良く肉付きもふっくらとして若返っている。

「団長……あの、若返っています」

 私は今起こった出来事、そのままを言った。

 ついさっきまで中年イケオジ騎士団長だった人が、十九歳の私と同じくらいの年齢の男性になっている。

 ほんの十秒前。私はみっともなく何もない地面でこけて、怪我をしていて地面へ座り込んでいた団長に咄嗟に受け止めてもらい、それを助けて貰った。

 その時に私たち二人の唇と唇が軽く触れ合ったのは、お互いの気持ちなんて何もない……ただのアクシデントで……何が起こったのか良くわからないけど、現に彼はこうして若返っている。

「ええ。驚きました。そのようですね……」