ガラッとドアが開き、黒髪のウィッグを外したキングが、襟元をゆるめながら入ってくる。

「あ……、昨日ごめんね! 急にお母さんから買い物を頼まれちゃって!」

すぐさま椅子から立って、ネクタイをとる彼に声をかけた。

昨日、七並べで遊んだ直後、突然、私のスマートフォンが鳴り、母からのメッセージを受け取った。

夕飯作りに必要な調味料が足りないからと、学校帰りに買ってくるように頼まれて、私は潤さんが来るのを待たずに帰ったのだけれど……。

急いで帰ったことを謝っても、キングは足を止めず、私の前を通り過ぎる。そして……。

「用があったわけじゃないんだろ? 何も無いなら、わざわざ来なくてもいいよ」

と返し、外したネクタイとカバンをソファーに置いた。

「……うん」

素っ気なく感じるのは気のせいだろうか。

昨日話したときは、もっと優しく振る舞ってくれていたのに、今は目も合わなくて、話し方もどこかよそよそしい。

疲れてるのかな。

この前、寝不足だったみたいだし、連日、依頼主と対面しているらしいから、ゆっくり休めていないのかも。

これ以上、話しかけないほうがいいように感じ、私は元いた場所に戻ったのだけれど──