「水城のそういう素直なとこ、嫌いじゃねーけどさ。これから別れさせ屋をやってくなら、感情を表に出したりしないで、相手を疑うことも知ったほうがいい」

ポンポンと撫でていた手で、髪をとかれ。

「優しい顔をしてても、腹の底では何考えてんのかわかんねーヤツもいる。……すぐ信じないほうがいいよ」

頬にあたる、ひんやりとしたキングの手の甲。

せっかく忠告してくれているのに、私の意識は彼の手に向いてしまって、心臓がバクバク音を立てている。

「……言ったそばから」

やれやれと言うかのようにつぶやかれ、キングは髪から手を引いた。

「え、何?」

「なんでもねぇ」

呆れた表情を浮かべられ、戸惑うと、彼はわかりやすくため息をついた。

そして、

「……ちょっとは隠せよ。こっちまで移る」

小さな声でそうぼやいてるんだけど、顔を背けているから、何が移ったのかわからなくて。

でも、私のことを考えて忠告してくれたことが嬉しい。

「ありがとう。……気をつける」

私は冷静さを装い、そっぽを向くキングに声をかけた。

頬に残った手の感触に、まだ胸はドキドキしていたけれど。