ショッピングモールの天井はアーチ状になっていて、ミカモくんは骨組みのパイプにぶら下がりながら、ガラス窓にとまったバルーンへと近づいていく。

ブラブラと揺れる足。

不安を感じていると、同じように見守る人の声が耳に届く。

「やばくない? 落ちたら即死でしょ」

死という言葉に、グッと胸が苦しくなった。

どうしてそんな行動に出たのか。なんでそんなことができるのか。聞きたいことはいっぱいあるけれど、今はただただ落ちないで欲しい。無事でいて欲しい。

祈るように見上げていたのだけれど、ミカモくんはすんなりバルーンを手にして、最初に手をかけた中央の柱を滑るようにして降りてきた。

手と足で慎重に2階の高さまで降りた彼は、シュッと飛び降りて回転しながら着地をする。

さっき見たときよりも人が集まっているこの場は、「おおー!」と感心する声と、拍手に包まれた。

バルーンを男の子へ渡しに行ったミカモくんは、周囲から話しかけられ、それに応じながら、にこやかに私のそばへと戻ってくる。

だけど、目の前にまで来ると、その笑みは消え、彼は残念そうな表情を浮かべた。

「あれ、かっこよくなかった? これでおちる女、結構いんのに」

平然とした態度で、私の下まぶたに曲げた人差し指を当ててくる。その指先に、ぽたりとこぼれたひと粒の涙。

拭われて、自分が泣いていたことに気がついた。

「怖かったよ……」

かっこいいとかそんなふうに思う余裕なんてなかった。

落っこちるんじゃないかとハラハラして、不安で、見ていることも出来なくて。

話し出すと涙は一気に溢れ出し、ミカモくんの姿がじわりと歪んでいく。

無事だったことにホッとする気持ちと、危ない行動をとる彼への怒りで、胸がいっぱいだった。