「ホントにやめて!」

一体、誰なのだろう。

キングという呼び名を口にするってことは、別れさせ屋の正体が相良宗介だと知っている人物だ。

そんな人がいることにも驚いてしまうけれど、それよりも、この人……本気でキスをするつもりなのかもしれない。

嫌がっても手の力をゆるめてくれない。ぐぐぐと引き寄せられ、あと数センチで唇が触れるところまで顔を近づけられている。

怖い。そう心の中でつぶやいた瞬間──

「遊んでないで、ちゃんとやりなさい」

突然、背後の通路から耳慣れた声がした。

「……潤、さん……?」

最近は話すことが増えているから、声を聞いただけで誰なのか判断できたが、暗がりの中でもそのシルエットは彼女らしく凛として見えた。

彼女がそばにくると、首に回されていた手はスイッチが切れたかのように、パッと離れてく。

だけど、彼の口元は全く変わらない。にんまりと笑みを浮かべたままだ。

「怒んないでよ。ちょっとからかっただけじゃん」

「冗談の範囲を超えてるわよ」

ふたりは知り合いなのかな。

親しげに会話をするふたりを静かに眺めていると、