──休憩時間を迎えた私は、西館の2階にある写真部の部室へ向かった。

「すごい人気だね……」

室内は、大きく引き伸ばされた写真パネルが、壁一面に何枚も飾られていて、テーブルには購入出来る手のひらサイズの写真が平積みされている。

客層は見事なほどに女の子ばかり。まるで、男性アイドルのグッズ売り場のようだ。

「人気投票もやってるんだ。新聞部と連携して、後日の校内新聞でランキング結果が載ることになってる。マチちゃんも投票してね!」

「投票……」

野木ちゃんから渡された投票用紙を手に、壁に貼られた大きな写真をぐるりと見回す。

恥ずかしそうにポーズをとっている男の子もいるけれど、ほとんどがモデルのように堂々とした表情だ。

中でも、一際観客を集めているのが……。

「美甘くん、いいでしょー! 」

この前、野木ちゃんがイチオシだと言っていた1年生の写真だった。

「……ハート」

「そう、片割れを手で作ってもらったんだ。あんなふうにハートを完成させて、記念撮影ができるようにしたくって」

壁に飾られたパネルの前で、写真の美甘くんと手を合わせ、ひとつのハートが作れる仕様になっている。その表情は、ウインクまでして余裕たっぷりだ。

「マチちゃんもハートやってみる? 撮ってあげるよ」

「あっ、ううん! いい、私は……」

「そう? 好みのタイプがいたら写真も買ってね!」