家庭科室からスープを運んでいると、後を追ってきた並木が、私の手から大鍋を奪う。

「結構重いじゃん。これ運んでから休憩入るよ」

家庭科室で作業をしていた彼は、休憩に入ってもまだ動いてくれるみたいだ。

「彼女さん、どこで待ってるの?」

「今日は友だちと来てるみたいでさ。今は1年の喫茶店にいるらしい」

「そうなんだ? 可愛い人だって聞いたよ」

「誰から?」

「美奈から。写真を見たことがあるって……」

「ああ、あれね」

廊下を歩くと、一般の人がたくさんいて、カップルの多さには驚いてしまう。

当たり前のことだけど、並木のように他校の人と付き合っている子ってたくさんいるんだな。

「水城はいつから休憩?」

「この後、中庭の子たちを無事に休憩させれたら、私も田嶋くんと交代する予定」

「そっか。休憩はアイツらと合流すんの?」

「ううん、ひとりで回るつもり。さすがに、あの中には混ざりづらい」

「まぁ……わかるわ。オレも混ざれねーな、あん中には」

並木との会話で、2時間前に見かけた光景を思い出した。

屋台でレジをしていた美奈を迎えに来た寺尾のそばには、地元の友人だというふた組のカップルがいた。

明らかに、私とは合わないノリの人たち。

見た目も派手だったし、今日まで面識もなかったはずの美奈に、いきなり「イェーイ」とハイタッチを求めていたような……。

人懐っこい美奈は、抵抗もなく「イェーイ」と返していたけれど、私はあんなふうに出来そうにない。

だから、休憩で合流しようと美奈から誘われたが、野木ちゃんのイケメン展へ行くことを理由に断ってしまった。