「っ……」

ようやく目にできた、キングの顔。

見慣れていたはずなのに、頬までの黒髪がなんだか大人っぽくて、思わず見とれた。

「……何」

「う、ううん」

変に思われて、慌てて顔を背けたけれど、もう一度見たくて、そっと視線を戻してみる。

彼は髪をかきあげたまま、作業を続けていた。

「……」

本当に綺麗な顔。

この素顔が公になれば、きっと相良くんの周りには沢山の女子が集まるのだろう。

誰にも知られたくない。そんな気持ちが込み上げてくる。

「……見過ぎ」

「っ!」

こっそり見つめていたのに、キングは気づいていたようで。

慌てて、自分も作業にもどると、今度はキングが私の様子を眺め始める。

「……見ないでよ」

視線を感じて、顔を上げられずにいると、

「水城さ」

キングはペンを置いて、話しかけてくる。

「……なんで実行委員になった?」

問いかけられて、目を合わせると、彼は真顔で私を見つめていた。

「あ……、美奈が代役を探してたの。文化祭、寺尾と過ごしたがってて」

「……」

「潤さんにも、ちょっとすすめられたから……やってみようかなって」

事の成り行きを話すと、キングは小さく息をついて、窓の外に目を向ける。

その横顔は、少し苛立っているように思えた。