潤さんから受け取ったという昨年のデザインをサンプルにして、割引券を作る私たち。

画用紙に長方形の枠を沢山描いたので、昨日の会議でもらったリストを元に、店名と割引内容を書き込んでいく。

会話もなく黙々とやっていたのだけれど、貸し出しカウンターにいた図書委員が、生徒会から放送で呼び出され、出ていってしまった。

先ほどまでチラホラと見かけていた生徒たちも、いつの間にか、本棚のそばからいなくなっている。

どうやら室内にいるのは私たちだけのようだ。

「うちの図書委員って、忙しいよね。いつもいないし……呼び出される回数も多い気がする」

「……」

「あれかなぁ? 定期的に一般公開してるから、それで忙しいとか?」

ふたりっきりになったことで、普段通りに話しかけてみたのだけれど、キングはまだ真面目で無口な生徒を演じている。

「もう誰もいないよ?」

「……」

「ウィッグも外していいんじゃない? その髪じゃ、文字も見づらいでしょ?」

会話がしたくて、私は普段の彼に戻るよう声をかけ続けた。

しつこく言い過ぎたからか、しばらくしてから、彼ははぁとため息をつく。

そして、

「これやってる間、髪は外さない。いつ誰が来るかわかんねぇだろ」

と返事をしながら、長い前髪を手でかきあげた。