“そんな写真を撮ってどうするの?”

そうたずねた私に、キングは迷いなく答えた。匿名で彼氏のスマートフォンへ送る、と。

彼氏の連絡先は、サキちゃんのほうで調べるらしい。最悪、手に入らなくても、彼氏の友人の連絡先さえわかればどうにでもなるらしい。

“誰が撮ったのか不思議がられないかな……”

そう不安がった私に、キングは表情を変えずに言う。

“誰が撮ったのか考えるよりも先に、彼女の浮気に対して腹を立てるはず。実際にあった行動なんだから、それを問いつめる行動が先だ。……彼氏が別れたがってるなら、それを理由に別れる方法を考えるだろうな”

何度もやってきたことなのだろう。

キングは、必ずそうなると確信を持った言い方だった。


──ベンチに腰かけてから数分後、キングは腕をベンチの背もたれにかけた。ターゲットの体には触れていないけれど、まるで肩に手を回しているかのような体勢だ。

微笑みかける笑顔も優しげで、見ていると、なんだか自分のときと重ねてしまう。

全て計算された行動だったのだなと、むなしい気分になる。