この世は混沌の中にある。

「では、その方法とは?」

「それは言えない」

「どうしてだ。
教えてくれても……」

「星神よ、宇宙神がこの星に与えた使命を果たせ」

「その使命とはなんでしょうか」

「この星に住まうすべての人間が、平和を望むことじゃ」

「それは、宇宙神の言う通りだ。
しかし、星神にだって、宇宙神の言いなりにはならない権利がある」

「そうかもしれんな」

「星神の役割はなんだ」

「それは、すべての星が正常な状態に戻るようにすること」

「宇宙神が星神に管理者を任せたということは、宇宙神の意思は正常に戻すということにあるのですね」

「そういうことだ」

「でも、星には寿命がある。
それは仕方のないことなのか」

「宇宙神は星に不死性を与えることもできる。
宇宙神の力を利用すれば星は永遠に存続させることができる。
しかし、星に永遠の繁栄を求めるか、滅亡の危機に瀕しても、星の未来を選択するかは、星の運命に委ねられるべきだ」

「では、銀河の正常を取り戻すためにも星を正常な状態に戻さなければならないということか」

「銀河の正常化には時間がかかりそうだ。
その間、星の管理ができるかどうか……。
銀河は銀河でもいろいろとある。
その星の管理者に話を聞く必要がある」

「その星の管理者に会わせてくれるのか?」

「星の管理者に会うためには、その星の星神の力が必要だ。
星神よ、お前の力で管理者を呼び出してもらうしかない」

「その管理者をどうやって呼び出す?」

「その星神にもわからないようだ。
星の管理者と会うには星の管理者になるしか道はない。
お前は星の管理者になりたいのか?」

「私は、銀河の管理者になるべき者だと思っている。
しかし、それは私自身が望んでいるわけではない。
ただ、星の管理を行うのであれば星の管理者になる他ないだろう」

「星の管理者になる方法は一つ。
それは宇宙神になることだ」

「それが、私の望むことではない。
星神でいることが私にはふさわしいし、また星の管理者になることも相応しいとは思わない」

「では、星神よ、その星の管理者を呼んできてほしい」

「あなたは、星の管理者を呼び出せるのですか」

「できる」

「その方法を私に伝授して下さい」

「わかった。
では、星神よ、お前に力を貸し与えよう。
今から、私が教える通りにやればうまくいくはずだ」

女は男の肩に触れて何かを唱えたあと、「これが星の管理者になるための呪文だ」
と告げたのだった。
すると、男は眩いばかりの光に包まれる――……
その日以来、彼の姿を見た者はいない。

ただ、ある星の異常を解決するために、星の管理者は旅立ったのだと伝えられるのみである。

宇宙神が死んでから約2年が経過した2016年の8月13日の午後11時58分、空を見上げると一筋の流れ星が落ちていくのが見える。
それは大気圏に突入して燃え尽きるのだが、その時に流れ星に向かって光の粒子が集まっていき吸い込まれていった。
その光が消えたとき、その場所は異次元空間となり、時空が歪み始める。
そして、時間の流れが狂い始めたのである。

人々は流れ星を見ると幸せになれるとか、金運がアップするなどと言われることがあるが、それは間違いである。
それは、宇宙からの贈り物なのだ。
それは、宇宙神の死を意味するものであるからだ。

この世界に神は一人だけいるが、この世界の管理者である「宇宙神」
がいなくなったことでこの世界の秩序が崩れ始めていた。
宇宙神は宇宙に存在する9つの惑星を管理しており、そのうちの7つは宇宙神の管理下にあり、この惑星もその中の一つだ。
残り3つの惑星は宇宙神のコントロール下にある惑星であるが、他の惑星を管理するシステムが存在している。
宇宙神はそのシステムを利用して、この惑星の状態を管理しているのだ。
このシステムは宇宙管理システムと呼ばれている。
このシステムを構築、管理するのが「星神」
と呼ばれる存在である。
宇宙神が死んだことによって星神が管理するシステムが停止してしまったのだ。
この惑星が地球と呼ばれていたころ、この惑星は地球管理システムに組み込まれていた。
そのため地球管理システムのコマンドを受け付けず暴走してしまっていた。
そして宇宙管理システムのバックアップも受けられなくなってしまったのだ。
そして、星神が宇宙管理システムの代わりとして機能させることとなる。
星神の仕事はこの惑星の生命を守ることである。
この惑星が正常化されるまで、この惑星を守り続けなければならないのだ。

宇宙管理システムが起動できない以上、惑星の異常は解消されることはない。
そして、宇宙神のように宇宙神システムのメンテナンスを行える人材もいないため、宇宙神の作ったシステムがそのまま残されているのだ。
この惑星を宇宙神に代わって守る者が必要だった。
星神に求められたのは、宇宙神と同じ役目を果たすことだった。
宇宙神と同じように宇宙管理システムを再構築し直すことが求められた。
星神にしかできないことなのだ。
この惑星が正常化されない限り、この世界を救うことはできないのだから。

この惑星の生物たちは、地球という環境に慣れてしまっているので、このまま放置してしまうと、地球の生き物よりも凶暴化しやすくなる。
地球管理システムによって管理されている惑星なら、地球の生態系の影響を受けているが、そうでないこの世界は地球とは異なる環境のため地球と同じような環境を維持することが困難になってくる。
つまり、この世界が本来の姿を保とうとすれば、宇宙の環境をこの世界に適用させなくてはならないのだ。
それは星神には難しいことではなかった。
なぜなら、宇宙神のシステムを使ってこの世界を管理しているためだ。
星神がこの世界で生き続ける限り、この世界もこの世界のまま維持し続けることができる。
しかし、星神もいずれは死ぬ運命だ。
それはこの世界が存在するかぎり逃れられない定めなのである。
だからといってこの世界を放棄することは許されない。
放棄すれば宇宙全体が崩壊する危険があった。
この世界が崩壊してしまうと星神も消滅してしまい、この世界は宇宙に存在しなくなってしまうだろう。

この世界を維持するためには星神が不可欠だ。
除けば破滅する。

すると管理システムに異常が生じに他の星々も宇宙の藻屑になる。
秩序の守護神なのだ。

そう言われて男はとっさに口から出まかせを言った。