別に間接キスをするわけでもないし。
いいかな、これくらいなら。むしろ……。
……むしろ? 私、今なにを。
「瑠夏?」
いつまでも答えない私に、心配そうな顔で犬飼くんは窺ってくる。
「い、いいよ。一緒に飲んでも」
「やった! じゃあ早速飲もう!」
「え、もう!?」
「だって、少し歩いたし喉渇かない?」
正直、喉は乾いてる。何も飲まずにご飯を食べるのもなんか変だし。
「じ、じゃあ。私こっちで」
「おっけー。俺はこっち」
そうして、二人でストローを咥える。
わっ、顔近すぎだよこれ!
お互いの息が掛かるくらいまで顔を近づけて。同時にレモネードを飲む。
「……」
「……」
絶対に私、今顔すごく赤くなってるよね。
もうレモネードの味なんて全然感じないよ…。
「…うん、美味しいね!」
「そうだね…」
ほんの数秒の間だったのに、すごく長く感じたな。
「じゃあ、こっちも食べようか。瑠夏はカルボナーラが好きなの?」
いつも通りの犬飼くんが私の前に置かれたカルボナーラを見て言った。
犬飼くん、もう平気そう。すごいなぁ、私はまだドキドキしてる。
「うん、パスタが好きで家族で外食する時はよく頼むかな」
「そっか! 俺も迷ったんだよねー。卵が乗っててすごく美味しそうだし」
そうして、私たちは一口ずつ自分が頼んだ物を口へと運ぶ。
カルボナーラの濃厚なチーズと卵の風味が口全体に広がってすごく美味しい。
「美味しい…」
「良かった。瑠夏はこれ好きそうとか、メニューまで検索して見つけた甲斐があったよ」
「犬飼くん…」
私のためにそこまで調べてくれたんだ。本当に優しいな犬飼くん。
「瑠夏が喜びそうなところ探すの凄く楽しかった。今はもっと楽しいけどね」
「あ、ありがとう」
「俺の方こそ、デートオッケーしてくれてありがとう」
やっぱりこれ、デート…なんだよね。
改めてその言葉を犬飼くんから聞いて、すごく嬉しく感じた。
なにかお礼…できないかな。


