「わっ、美味しそう」
しばらくして、注文したメニューが運ばれて来た。
各々が頼んだものとデザート、さらにもう一品が並んだ。
「あれ?」
これって、レモネード?
しかも、一つのコップにストローが2本刺さってる。
「あの、すみません。これ頼んでないんですけど」
犬飼くんも同じことを思ったのかこくりと頷く。
私も犬飼くんもドリンクの注文をした覚えはなかった。
お店から提供されるお水だけで十分だと思って頼まなかったはずなのに。
「こちら休日に来店されたカップル様の限定サービスとなっております。どうぞお召しがりくださいませ」
そうニッコリと受け答えをされ、店員さんは他の席へ空いた皿を取りに行ってしまう。
「カップル……」
私は周囲の男女で来ている他のお客さんを見る。
「!」
なんと、二人で顔を近づけてストローを咥え、一緒に飲んでいるグループがいくつもあった。
嘘っ! 男の子と二人でいるからカップルに思われるのは仕方がないにしても、これはちょっとハードルが高いよ!
「……」
ちらっ。
私は視線を犬飼くんへと向けた。
『あ』
ちょうど私のことを見ていた彼と目が合う。
犬飼くんもさすがに恥ずかしいのか顔が赤くなっていた。
「ご、ごめん瑠夏。俺、こういうのがあるって知らなくて」
「う、ううん。ちょっとびっくりしたけど。平気だよ!」
「えっ…」
「え?」
犬飼くんは目をぱちくりとさせて言った。
「いいの?」
「え、うん」
「一緒に飲んでも…」
あ、そうか。今私が言ったこと。一緒に飲むのを問題ないと答えられたように聞こえるかもしれない。
「ち、違くて! その、これは犬飼くんが飲んでいいよって、意味で…」
「やってみたいな瑠夏と…」
「え…」
「これ」
そうして、レモネードを指さされる。
「駄目?」
「うっ、…そ、それは」
犬飼くんにそう言われると、つい胸が苦しくなる。
うぅ、そんな目で見つめないで〜。
捨てられる仔犬のような目で見つめられ、私の心が揺らぐ。


