犬系男子の犬飼くんは私にすごく懐いてます


 駅に着いて早々に私たちは昼食を摂りにカフェへと入った。

「私、ここ来るの初めて」
「俺もだよ。ていうか、男子だけじゃ絶対入りづらい」
「あはは、そうかもね」

 見たところ、内装も可愛いし店内に居るお客さんも殆どが女性だ。
 男性もいるけど、女性と座るカップルしかいない。

「ご注文がお決まりになりましたらお声がけください」

 私たちが席に着くと、店員さんはメニューを広げて一度下がっていく。

「ふぅ、お昼時だけど座れて良かったよ」
「うん。犬飼くんはこのお店知ってたの?」
「まさか、今日瑠夏と来るために調べたんだよ。って、こういうの言ったら格好悪いか…」
「ううん、ありがとう」

 犬飼くん、私のこと考えてお店選んでくれたんだ。
 すごく、嬉しいな。

「オシャレだし、とても良いお店だね」
「学生に人気で比較的安価で休日は大盛況らしい」

 言われてみれば、若い年齢層のお客さんが多い。

「女子と出掛けるのなんて初めてだから。でも気に入ってくれたみたいで良かった」
「うん……。え、初めて?」
「そうだよ。二人で出掛けるのなんて瑠夏が初めてだよ」
「そ、そうなんだ」

 私は顔が赤くなるのをメニューで隠すようにした。

 犬飼くんも…初めてなんだ。意外だなぁ。

「もしかして、俺に彼女が居た事があると思ってる?」
「どうしてわかったの!? …あ」
「ははっ、やっぱりそうか」

 可愛らしく笑う犬飼くん。
 思わず私はその笑顔にキュンとしてしまった。

 …この気持ちって。…私、もしかして犬飼くんの事。

「瑠夏はわかりやすいな。顔とか行動によく出るね」
「だ、だって。犬飼くん人気あるから…」
「確かに友達は多いけど、付き合った事とかはないよ」
「そうなんだ」
「意外?」
「うん、犬飼くんかっこいいし…」

 あれ、私何言って…。

「へ、へぇ…。瑠夏ってそういう事いうんだ」
「ご、ごめん今のは!」
「謝らないでよ。俺は瑠夏にそう思ってもらえて嬉しい」

 どうしよう…。恥ずかしくて犬飼くんの顔見れないよ。

「とりあえず、メニュー頼もうか。俺はオムライスにする」
「あっ、じゃあ私はカルボナーラで」

 メニューの写真の中でもオススメと書かれているし、すごく美味しそう。

「せっかくならデザートも付ける? ここは俺が奢るから」
「えっ、そんな悪いよ」
「ううん、奢らせて。今回は俺が誘ったんだし」

 こういうシチュエーションも憧れてたけど、いいのかな。
 犬飼くん、優しすぎだよ。

「…本当にいいの?」
「もちろん!」
「じゃあ、次行くとこは私が出すから」

 それなら割り勘ということになるよね。

「そう来たかー。でもわかった。じゃあ、ここは俺が奢るからね」
「犬飼くん。ご馳走様です」
「うん。あっ、すみませーん」

 近くを通りかかった店員さんに声をかけ、各々のメニューを注文することに。