「俺は嬉しいけど…いいの?」
「う、うん」

 男女複数人で遊ぶ時は別に普通だけど、二人きりとなると意味合いはだいぶ変わると思う。

「わかった。じゃあ、行こうか」
「お、お願いします…」

 私たちは恋人じゃないけど、プリクラを撮りたいって私から言い出したことで犬飼くんに自分の気持ちが伝わってしまうんじゃないかと後になって心配になった。

 気がついたら、犬飼くんの事ばかり考えてる。彼の一挙一動に意識して。一緒にいるのが楽しくて、嬉しい。これからも、傍にいたい。

「瑠夏? 入らないの」
「あ、うん。入ろう犬飼くん」

 それから私たちは、二人で一台のプリクラの中へと入った。

◇◇◇◇

「今日はありがとう犬飼くん。プリクラも撮ってくれて」
「ううん。それより、俺の分のお金まで出してもらっちゃって良かったの?」
「犬飼くん、お昼ご飯のお金出してくれたから」

 気を遣ってくれた犬飼くんに、私は笑顔で答える。

 外はすっかり日が暮れて、私たちは朝に待ち合わせた駅まで帰ってきた。

「ありがとう。このプリクラも大事にするよ」

 犬飼くんは手に持ったプリクラを見て、笑顔で言った。

 私はプリクラの中でのことを思い出して顔が紅潮する。

 私たちが入ったプリクラの音声ガイダンスがだいぶカップル寄りのものだったので、大胆な事ばかりを言ってきて、私も犬飼くんも顔を赤くし合った。

 …あんなの、恥ずかしがらない人なんていないよ。

 私たちも肩をくっつけて撮るのが限界だった。

『もっとくっついちゃおー!』

 なんて音声ガイダンスに言われた時は心の中で、できるか! って思った。

「今度は私からも、誘うね」
「っ! うん、待ってる! また遊ぼうね瑠夏」
「…その、犬飼くん」
「うん、どうしたの?」

 私はもっと、犬飼くんと距離を縮めたい。
 今までは犬飼くんから歩み寄ってくれていたけど、今度からは私も。

「明日の放課後は、一緒に帰れるかな?」
「もちろん! 一緒に帰ろう!」

 太陽のように明るい仔犬のような無邪気な笑顔。
 やっぱり私、犬飼くんの笑った顔好きだなぁ。

「じゃあ、また明日。帰り気をつけてね瑠夏」
「うん、また明日」

 私たちは自分の家がある方へと歩き出す。

 こうして、私と犬飼くんのお出掛け。
 人生初めてのデートは終わりを迎えた。
 今日は一日ドキドキしっぱなしだったけど、本当に楽しかった。

 犬飼くんの事も色々知ることができた。
 意外と男の子らしいところ、かっこいいところ、頼れるところ。それに、やっぱり犬飼くんはすごく優しい。

 もっと、犬飼くんのことを知りたい。もっと、仲良くなりたいな。

 私が抱いてる彼を愛おしく想うこの気持ち。
 そっか、私はきっと、犬飼くんに恋をしてるんだ。