犬飼くんは、いつも私を褒めてくれたり、私の言葉に喜んでくれる。それなら、私も返さないといけないよね。
「…犬飼くんも、今日の服かっこいいよ」
「えっ」
「普段は制服だから、私服を見るのは初めてだけど、犬飼くんもオシャレだと思うな」
私は素直な気持ちを伝えた。
デートの時にはお互いの服装を褒める。そんな事が何かの雑誌に載っていたと思う。
まさか自分がこうしてそれを実践する事になるとは思わなかったけど。
「そう…かな」
犬飼くん、顔が赤い。
普段は私がドキドキさせられっぱなしだけど。こういう犬飼くんはなんだか新鮮。
「もしかして、照れてる?」
「だって、そんな事言われたの瑠夏が初めてだから」
「えっ、そうなの。クラスの子とかには言われた事ないの?」
「女子と二人で遊ぶの初めてだって言ったじゃん。だから、急にそんな事、言われると思ってなかったから…」
片手で顔を隠してる。
やっぱり照れてるんだ。
「瑠夏…。本当に、そう思う?」
確かめるように聞かれた質問に私は笑顔で答えた。
「うん。犬飼くんは、いつも格好いいけど今日はもっと…」
あれ、私なに口走って…。
気持ちに素直になりすぎたのか、口からそんな事がつい漏れた。
「いつも?」
「……あ」
聞かれてしまった。
言葉を切ってももう遅い。犬飼くんには私の言葉がはっきりと聞こえてしまったみたいだ。
「ありがとう。瑠夏」
「う、うん」
つい勢い余って言っちゃったけど、今日の私ちょっと変だ。
犬飼くんにドキドキしっぱなしだし、色々と意識しちゃうし。これじゃ、まるで私が…。
「あれ、瑠夏?」
犬飼くんと話していたところに、聞いたことのある声で名前を呼ばれた。


