次に来たのは洋服屋さん。
私が可愛いお店を見つけてみていたら、犬飼くんが行ってみようって手を引いてくれた。
駅で待ち合わせてからというもの、自然と手を繋ぐようになって。前よりもさらに犬飼くんとは仲良くなれている気がする。
周りから見れば、やっぱりカップルに見えるのかな…。
もし、本当にそういう関係になれたら…私は。
「女性ものしかない店ってなんか新鮮」
店内で服を手に取る私の横で、犬飼くんが言った。
「ご、ごめんね犬飼くん。やっぱりつまらない…よね」
男の子だもん。いくら私と一緒でも肩身が狭い思いをするのなら、もう出た方がいいかな。
「そんなことないよ。瑠夏楽しそうだし俺も楽しいよ!」
「そ、そう?」
「うん」
私も、犬飼くんが楽しそうにしているところを見ると同じ気持ちになる。それと同じなのかな。だとしたら、嬉しいな。
「瑠夏はこういうところでいつも服を買うの?」
「うん、お店にこだわりはないんだけどデザインが好きなのを選んで買ってるかな」
「へぇ…」
「犬飼くん?」
私の服をジッと見つめてくる。
なにかあるのかな。
「今更なんだけど、その服も似合ってるね。すごく可愛い。あと、髪型も」
「えっ! なっ、どうしたの急に!」
いきなりの事に私はびっくりする。
「最初見た時に言うべきだったんどけど、色々あったから言えてなかったと思って」
確かにあの状況でそんな話をする余裕はなかったよね。
「こういうのって、会った時に褒めるのが正解だよね。失敗だ」
落ち込んだ様子を見せる犬飼くん。
そんな事ないのにな。
本当に、犬飼くんは私のこと考えてくれてるんだ。
「でも、瑠夏は水色がよく似合うね。すごく可愛いよ!」
「そ、そんなに褒められると恥ずかしいよ」
「どうして? 似合ってるのに恥ずかしがる必要なんてないじゃん」
犬飼くん、私のこと可愛いって思ってくれてるんだ。
今まで男の子にそんな事言われた事なかった。
頑張って選んだ甲斐、あったかも。
「あっ、でもちゃんといつも可愛いと思ってるからね!」
「!?」
心を読まれた!? 犬飼くんって実はエスパー。
突然そんなことを言われ、胸が高鳴る。
「って、俺は何を必死に言ってるんだって感じだよね。なんかごめん」
「だ、大丈夫。ありがとう犬飼くん」
こういう時、なんて返せばいいのかな。


