気付かないうちに、駅で怜と別れ、自分の部屋の前まで来ていた。


ドアを開けて中に入り、鍵をかけた途端、
よろけた体を壁にもたせかけ、膝から崩れ落ちた。

ポロポロと零れる涙が止まらない。

ありがとう、なんて言って余裕を見せてみたけど、
本当は言葉を発するのもやっとなくらいで、
余裕なんてどこにもなかった。



惨め



泣きながら、そんな言葉が頭をよぎった。


しばらく泣いていると、
ふと、
電気も点けていないのに、部屋の中が明るいことに気付いた。

カーテンを閉めていなかったリビングの窓から差し込んだ白い光が、
玄関にいる雪奈のところまで届き、あたりをうっすらと照らし出している。


締め忘れたリビングドアの向こうには、空に浮かぶ真ん丸な月。


皮肉なくらい、綺麗な満月。


そんな満月を見つめる雪奈の目から零れた涙は、
満月の光に照らし出され、
キラキラと、光っていた。