「あ。やっぱ目立ちます?帰宅してから顔冷やしたんだけどなー。やっぱこういうのはすぐ冷やさないとダメなんすね!」
はははっと笑う大和を見て、雪奈は泣きそうになった。
「ごめ…私があの後、すぐ帰しちゃったから…」
手当て、すべきだったね、と俯きながら呟くと、
大和は軽く頭を振って「そういう意味で言ったんじゃないんで!」と、笑って言った。
営業スマイル、かな。
手当もせずに、この心優しい後輩を帰した昨日の自分を恨みたくなる。
とはいえ、自分に心の余裕がなかったことも事実。
仕方なかったのだ。
「雪奈さん、昨日は眠れました?」
本社ビルに向かって雪奈と一緒に歩きながら、大和がそう尋ねた。
「うん、おかげさまで眠れたよ。ありがとうね。」
雪奈が大和を見上げてそう言うと、大和は安心したようで、柔らかい笑顔で「よかった」と呟いた。
そして
「…眠れなかったら、いつでも呼んでください。」
と言って大和は微笑んだ。
「ありがと。」
雪奈も、弱々しくではあるが、お礼の言葉を返した。
──いつでも、なんて言ってくれるんだ。
社交辞令以外の何ものでもないが。
でも
例え社交辞令だとしても、嬉しいと思えた。