斗真さんが恋しくなり携帯電話を取り出す。あれから着信もメールもないのは当然だ。
日本との時差は八時間、そろそろ朝食を摂っているだろうか。靴の本場とされるイタリアの暮らしも大分慣れ、行きつけのカフェが出来たと聞く。本人曰く水ではなくコーヒーが合うそう。
エスプレッソを片手にイタリア美女等と談笑する姿を想像し、唇を噛む。滅多に帰国しない彼はあちらで素敵な恋人を見付けたかもしれないーー私とは違って。
斗真さんは恋愛に関する話題を避ける節があり、たぶんそれは私達が兄妹みたく育ったから。私相手だと恋愛模様を話すのが擽ったいらしく、はぐらかす。そればかりか御曹司という世の女性が放っておかない身分なのに、浮いた話も聞かせなかった。
「ねぇ、お茶を淹れてくれない?」
階段下より浅田さんが指示する。
「あ、はい。すぐにお持ちしますね」
この時、鏡台の上へ携帯を置いたままにしてしまい、数分後に入る連絡に気付く事は出来なかった。
日本との時差は八時間、そろそろ朝食を摂っているだろうか。靴の本場とされるイタリアの暮らしも大分慣れ、行きつけのカフェが出来たと聞く。本人曰く水ではなくコーヒーが合うそう。
エスプレッソを片手にイタリア美女等と談笑する姿を想像し、唇を噛む。滅多に帰国しない彼はあちらで素敵な恋人を見付けたかもしれないーー私とは違って。
斗真さんは恋愛に関する話題を避ける節があり、たぶんそれは私達が兄妹みたく育ったから。私相手だと恋愛模様を話すのが擽ったいらしく、はぐらかす。そればかりか御曹司という世の女性が放っておかない身分なのに、浮いた話も聞かせなかった。
「ねぇ、お茶を淹れてくれない?」
階段下より浅田さんが指示する。
「あ、はい。すぐにお持ちしますね」
この時、鏡台の上へ携帯を置いたままにしてしまい、数分後に入る連絡に気付く事は出来なかった。

