御曹司の初恋ーーお願いシンデレラ、かぼちゃの馬車に乗らないで

 ずっと言いたかった事を言え、力が抜けて私まで蹲りそうになる。斗真さんが腕を伸ばしたのが見えたので身体を預けた。
 よしよしと頭を撫でられる。開放感から涙が出てきてしまう。

 私達が抱き合う中、浅田さんが車へ乗り込む音がする。ほどなくしてエンジンが掛かり、走り去っていく、。




「はい、どうぞ。熱いから気を付けて」

 それから別荘に入り、斗真さんはお茶を淹れてくれた。紅茶はまだ涙が滲む私を気遣う優しい味がする。

「浅田さんは何も言わずに帰ってしまったけれど、大丈夫でしょうか?」

「沈黙は肯定だろ。後日、書面できちんと処理はする。姫香の叔父さんにも話をつけよう」

「慰謝料とか結婚式場のキャンセル料とか……」

「確かにそういった補償はしなければいけないな。だが、それは些末な事。俺はここに姫香が居てくれるのが一番大切」

 斗真さんは正面へ腰掛け、穏やかに微笑む。

「斗真さんは、優しいです。私なんかの為に」

「私なんか、とか言わない。俺が優しいのは姫香が相手だから。浅田には優しくなかったでしょう? 本音を言えば婚約破棄で手打ちにしたくなかった。社会的制裁を受けさせたい。でも、それこそ優しい姫香が望まないからーーなぁ、こちらを見てくれないか?」

 言われて顔を上げるものの、視界が霞む。笑顔を上手く作れず、鼻を啜った。