御曹司の初恋ーーお願いシンデレラ、かぼちゃの馬車に乗らないで

「どう繕ったって奪略は奪略! 然るべき対応をさせて貰うからな!」

 喚く浅田さん。

「ご勝手に。その然るべき対応とやらをしてお前の清廉潔白が証明されればいいが。さて、叩けば埃が出るのは俺なのか?」

 ボストンバッグを拾って文字通り、埃を払う。

「まぁ、いい。お前がその気なら俺も本気で相手をしてやる。かかってこいよ?」

 斗真さんはシャツを捲り、私を道の脇へ避難させた。

「斗真さん! 暴力はーー」

「殴ったりしない、心配するな。こいつは殴る価値もない」

 ヒステリックに持論を主張する分、口では浅田さんが優勢に映るものの、斗真さんの言葉は一つひとつ重みがある。

「はっ、峯岸の御曹司は頭に血が上りやすい。女にのぼせ判断を誤れば身を滅ぼす。その女にどれだけ価値がある?」

 私を指差す。表情も表現も最大限に歪め、もはや憎まれていると感じてしまう。

「彼女は甘やかされ、蝶よ花よと育てられた箱入り娘。所詮、若くて少し可愛いだけ。父親が倒れても打つ手がなく、援助目当てに僕との結婚を決めたんだ」

 そう、仰る通り。これに関しては申し開きをしようもなくて。

 すると斗真さんは一歩前へ出て、浅田さんの人差し指を掴む。

「これ以上、姫香を侮辱すればお前の会社の不正を暴く。それに甘やかされて育てられたのはお前じゃないのか? 姫香以外にも随分と女性を泣かせているみたいだな? 彼女等への慰謝料を両親に支払わせるなんて、浅田不動産の二代目はろくでなしだ」