伯父様はいわゆる仲人、キューピット。とある日、私の結婚相手を連れてきた。

「峯岸? あぁ、彼も立派になったものだな。経済誌で特集されていたのを読んだよ。彼も結婚式に呼ぶのかい?」

「何せお忙しい方なので。予定が合えば」

「幼馴染みのよしみで参列して貰うといい、世界の峯岸が来れば箔が付くじゃないか。お父さんは出られそうもないんだろう? 峯岸とヴァージン・ロードを一緒に歩くのも面白いな」

 私の結婚を『箔が付く』や『面白そうだ』と言いのける伯父様には魂胆がある。むしろ魂胆しかない。病に倒れた父に代わって私達を支えようとするどころか、投資感覚で私を嫁がせる。端的に説明すると、資金援助と引き換えに私は好きでもない人の花嫁になるのであった。

「私、ヴァージン・ロードは伯父様と歩きたいです」

 メールのやりとりのみ、数年会っていない斗真さんとヴァージン・ロードを歩けるはずがない。それに斗真さんは私の初恋相手であり、どういう心持ちで歩けと言うのだろう。

 伯父様は私の言葉に気を良くし、深くソファーへ沈み込むと、そうかそうかと踏ん反り返った。

 そこへお茶が運ばれてきて、話題は結婚相手の浅田さんの事へ移る。