大企業の跡取り息子ーー斗真さんの生まれながらの環境を揶揄する声は正直なところ少なくない。けれど幼馴染みである私は、彼が峯岸の名に甘んじる事なく努力を重ねているのを知っていた。峯岸のご両親が一人息子に期待する故、どれだけ厳しく接しているのかも。
「斗真お兄ちゃんは凄いなぁ。私は将来の事なんて考えられないもの」
「はは、姫香はまだ小さいから」
「またそうやって子供扱いする!」
「ごめん、ごめん」
実際、私の思考は幼かった。斗真さんが同年代と比べ大人びているのをスマートだ感じ、勘違いする。彼の幼馴染みであるのが誇らしい、私が自慢できるのは斗真さんの事しかなかったから。
「姫香はそのままでいい、そのままでいてくれ」
そう言って頭を撫でた。仔猫の機嫌を取るみたいな優しい手付きが心地よく、こうして撫でて貰えるのなら幾らでも拗ねた真似をしてしまう。
「ふふ、どうしようかな? 私もずっと斗真お兄ちゃんの妹でいられないかも?」
「……え、そうなのか? 可愛い妹の自由研究を手伝ってあげようと思ったのに。なるほど、姫香は妹じゃないんだな?」
「え! それは話が違うよ!」
「斗真お兄ちゃんは凄いなぁ。私は将来の事なんて考えられないもの」
「はは、姫香はまだ小さいから」
「またそうやって子供扱いする!」
「ごめん、ごめん」
実際、私の思考は幼かった。斗真さんが同年代と比べ大人びているのをスマートだ感じ、勘違いする。彼の幼馴染みであるのが誇らしい、私が自慢できるのは斗真さんの事しかなかったから。
「姫香はそのままでいい、そのままでいてくれ」
そう言って頭を撫でた。仔猫の機嫌を取るみたいな優しい手付きが心地よく、こうして撫でて貰えるのなら幾らでも拗ねた真似をしてしまう。
「ふふ、どうしようかな? 私もずっと斗真お兄ちゃんの妹でいられないかも?」
「……え、そうなのか? 可愛い妹の自由研究を手伝ってあげようと思ったのに。なるほど、姫香は妹じゃないんだな?」
「え! それは話が違うよ!」

