忘却の天使は溺愛に囚われて



「ありがとう。まあ、乙葉も同じだけどな」
「私、ですか?」
「溜め込むぐらいなら吐き出せって話。辛くなったらいつでも言えよ」

 そう言って頭をポンポンされる。
 朔夜さんの大きな手、すごく安心するなあ。

「ありがとうございます。朔夜さんも辛くなったら言ってくださいね!」

 朔夜さんに笑いかけ、少し早いけれどそろそろ家を出ようかなと思い立ち上がろうとした。
 けれど朔夜さんに腕を引かれてバランスを崩し、彼の元に倒れ込む形になる。

「す、すみません……!」

 腕を引かれたとは言え、全体重を朔夜さんにかけてしまった気がして慌てて謝る。
 急いで離れようとしたけれど、背中に手をまわされて動きを制されてしまった。

「あの、朔夜さん……?」
「まだ家を出るまで時間あるだろ」

 朔夜さんの指が私の頬を優しく撫でた。
 触れられた部分が熱を帯び、鼓動が速まる。

 今日ずっと一緒にいて、一切触れてこなかったから大丈夫だと思い完全に油断していた。
 これは前回と同じ流れな気が……!

「そ、そろそろ行こうかなと……」

 わざと大きめの声を出して逃げようとしたけれど、朔夜さんがそれを許してくれない。