それは“カンナ”のことや朔夜さんに対して、という意味だろう。
最初は気になっていたけれど、聞く勇気がなかった。でも今なら聞けそうな気がする。むしろチャンスだろう。
けれど私は……。
「無理に話す必要なんてありません」
何も聞かないことにした。
朔夜さんが過去を思い出すことで苦しませてしまうかもしれない。
それに乙葉として見てほしい私にとって、“カンナ”の話を聞くと変に意識してしまうかもしれず、それも少し怖かった。
朔夜さんの興味を惹きたくて、“カンナ”に似せるなんてこと絶対にしたくない。私は私らしくいたい。
“カンナ”の正体については、私なりに暴くことに決めた。
「あっ、でも話したくなったらいつでも聞くんで話してくださいね! 溜め込んで苦しくなるより、吐き出した方が少しは楽になると思うので! 無理はしないでください」
私の言葉に朔夜さんは目を丸くする。
何か変なことでも言ったかと不安になったけれど、すぐに優しく微笑んでくれた。



