忘却の天使は溺愛に囚われて



「うーん、そう言われると悩みますね……」
「一つに絞る必要なんてない。これから二人の時間なんていくらでもあるからな」

 二人の時間……朔夜さんの描く未来に、私がいるようで嬉しい。

 それも、私のしたいことに付き合ってくれる。
 乙葉として受け入れているような気がして、顔が綻んだ。

 その日は夜になるまでテレビを観たり、ゲームをしたり……と、朔夜さんとのんびりとした一日を送っていた。

「はあ〜、こんなにゆっくりしたの久しぶりな気がします」
「そうだな」

 ソファで私の隣に座る朔夜さんに目を向けると、穏やかな表情をしていた。
 そんな朔夜さんが見られて安心する。

 今この瞬間が少しでも朔夜さんにとって安らぎの時間になっていたらいいな。

「……何も、聞かないんだな」

 心地いい沈黙が流れていたかと思うと、ボソッと朔夜さんが呟いた。
 独り言のような言い方だったけれど、私ははっきりとその言葉を拾う。