忘却の天使は溺愛に囚われて



「ありがとうございます。それではお言葉に甘えてゆっくりしますね」

 とはいえ、何かしら家事をやらせて欲しいのだけれど……さすがに何もせずに部屋でのんびり過ごすのは気が引ける。


「そういえば、朔夜さんは今日予定とかってあるんですか?」
「特に何もない。今日は俺も家にいるつもりだ」

 多分、私を一人にしないために合わせてくれたのだろう。
 怖そうに見えるけれど、実際はとても優しくて温かい人だから。

「初めて二人で過ごせるんですね! せっかくなので何かしましょうか! ゲームとか映画鑑賞とか……何かリクエストはありますか?」

「俺は乙葉のしたいことがいい」

 優しい眼差しを向けられ、思わずドキッとしてしまう。
 愛おしさの含まれたその視線は、いつまで経っても慣れそうにない。