恋愛電車

帰りの電車。
辺りはすっかり闇におおわれていて、都会の明かりだけが景色を彩っていた。

「マフユ、さんだよね。」

ドキリとした。
いつの間にか隣にいたスバルが話しかけてきた。

「す、スバルさん!」

「久しぶり。って言っても昨日ぶりか。」

「あれ、スバルさん、なんか今日髪型違います?」

私は、スバルさんの髪が心做しか短くなったような気がした。

「うん。昨日ついでに理容室行ったんだ。」

「そうなんですね。……似合ってます。」

「……そうかな。ありがとう。」

彼は、昨日の爽やかな笑顔とは裏腹に、少し俯き加減にそう言った。

「あ、あの、その、急で申し訳ないんですけど、その、連絡先とか、交換したいなって、」

出会い厨のようになってしまうが、これ以上機会を逃すようなことはしたくなかった。

「え?連絡先?俺メールしかしてないんだけど、大丈夫?」

「ぜんっぜん!大丈夫!です」

「分かった。じゃあアドレス教えるね。」

神様よ。私に栄光をくださりありがとうございます。

彼のメールのアイコンは初期のままで、いかにも真面目君というイメージだった。

だが、目の前で私と話している彼は社交的でよく話す人だった。

(これが俗に言うギャップ萌え……)

夜を走る電車が、ガタンと揺れた。