「え!待って、リリタくんのグッズ新ビジュアル出てる。」
翌日の朝、私はスマホからの通知で飛び起きた。
発信元は、全国のオタク達が好んで集う素晴らしい店、アニメイコからの通知だった。
「リリタの新ビジュアル拝みに行かないと、」
時刻は朝の9時。
休みの日は昼に起きるようなだらしない生活をしている私だったが、推しのことになると行動力が上がる。
「えっと、リリタ君は緑がモチーフだから、」
身につけるアクセサリーは、あるアクションアニメの推しのイメージカラーである緑にした。
「この緑の宝石…リリタの瞳のよう……あー、結婚したい。」
私は、リリタの缶バッジやキーホルダーをバッグにいくつか付けて、ルンルンで家を出た。
「あ、あれって、もしかして、」
駅に着く頃。
横断歩道の向こう側にいる人物に目をやった。
「……私の好きな人、じゃん。」
彼は駅の出入り口で誰かを待っているようだ。容姿端麗な彼のことだ。彼女くらいはいるだろう。
「……また失恋の予感か、」
私は、何も知らないフリをして彼の目の前を通り過ぎようとした。
「……すみません、これ、落ちました」
後ろから誰かに声をかけられた。
振り返ると、彼がいた。
「え?あ、えっと」
「これ、貴方のですよね?緑のハンカチ」
「あー、そうですそうです、すみませんありがとうございます。」
私は、自分自身でも動揺しているのがわかった。
「君さ、いつも電車いるよね?」
「あ、は、はい。貴方も、よく見かけるなぁとは、思っていて、でして、えっと」
「ははは。面白い。これから面接でも行くの?随分慌ててるけど。」
彼は冗談交じりにそう言った。
こんなに会話が続くなんて思わなかった。
「いえ、用事があるだけで」
「そうなんだ。それ、なんだっけ、なんかのアニメのキャラだよね?」
彼は、私の予想以上に社交的な人だった。
勝手な偏見で、無口でクールな人だと思っていた。
いや、クールなのには変わりは無い。
「はい。復讐のマーダーに出てくるリリタ君です。」
私は、アニメ名とキャラ名を彼に教えた。
彼は「あー、」と言って納得する素振りを見せた。
「これから、どこか行かれるんですか?」
「いや、バス待ってるんだ。隣町の新しい本屋に行きたくて。」
彼は、腕時計を見ながらそう言った。
筋の通った綺麗な指先に、思わず見蕩れてしまった。
「アニメイコ行くなら、バスの方が近いと思うよ。料金も同じくらいだし。」
「え、そうなんですか?今まで電車でいってました。」
「あと五分くらいしたら来るけど、多分俺とは逆方向だね。」
私は、彼の言葉に少しガッカリした。
同じ方向だったら、あんなことやこんなこと、、。
「そうですか。本屋、楽しんでください。」
「ありがとう。君も推し活とやら頑張れ。」
私は、少し恥ずかしくなった。
「あの、その、お、お名前とかって」
「俺はスバル。変な名前だからすぐ覚えられると思うよ。」
スバルは、少し笑いながら言った。
メガネ越しに、目尻に寄っている皺が見えた。
「スバルさん、かっこいい名前ですね。私はマフユです。」
「マフユさん。いい名前。あ、バスが来た。それじゃ、落し物には気をつけて。」
彼は、爽やかな笑顔でバスに乗って行った。
アニメイコで推しの素晴らしすぎるビジュアルを見たとき以外、スバルの爽やかな笑顔が頭から離れなかった。
翌日の朝、私はスマホからの通知で飛び起きた。
発信元は、全国のオタク達が好んで集う素晴らしい店、アニメイコからの通知だった。
「リリタの新ビジュアル拝みに行かないと、」
時刻は朝の9時。
休みの日は昼に起きるようなだらしない生活をしている私だったが、推しのことになると行動力が上がる。
「えっと、リリタ君は緑がモチーフだから、」
身につけるアクセサリーは、あるアクションアニメの推しのイメージカラーである緑にした。
「この緑の宝石…リリタの瞳のよう……あー、結婚したい。」
私は、リリタの缶バッジやキーホルダーをバッグにいくつか付けて、ルンルンで家を出た。
「あ、あれって、もしかして、」
駅に着く頃。
横断歩道の向こう側にいる人物に目をやった。
「……私の好きな人、じゃん。」
彼は駅の出入り口で誰かを待っているようだ。容姿端麗な彼のことだ。彼女くらいはいるだろう。
「……また失恋の予感か、」
私は、何も知らないフリをして彼の目の前を通り過ぎようとした。
「……すみません、これ、落ちました」
後ろから誰かに声をかけられた。
振り返ると、彼がいた。
「え?あ、えっと」
「これ、貴方のですよね?緑のハンカチ」
「あー、そうですそうです、すみませんありがとうございます。」
私は、自分自身でも動揺しているのがわかった。
「君さ、いつも電車いるよね?」
「あ、は、はい。貴方も、よく見かけるなぁとは、思っていて、でして、えっと」
「ははは。面白い。これから面接でも行くの?随分慌ててるけど。」
彼は冗談交じりにそう言った。
こんなに会話が続くなんて思わなかった。
「いえ、用事があるだけで」
「そうなんだ。それ、なんだっけ、なんかのアニメのキャラだよね?」
彼は、私の予想以上に社交的な人だった。
勝手な偏見で、無口でクールな人だと思っていた。
いや、クールなのには変わりは無い。
「はい。復讐のマーダーに出てくるリリタ君です。」
私は、アニメ名とキャラ名を彼に教えた。
彼は「あー、」と言って納得する素振りを見せた。
「これから、どこか行かれるんですか?」
「いや、バス待ってるんだ。隣町の新しい本屋に行きたくて。」
彼は、腕時計を見ながらそう言った。
筋の通った綺麗な指先に、思わず見蕩れてしまった。
「アニメイコ行くなら、バスの方が近いと思うよ。料金も同じくらいだし。」
「え、そうなんですか?今まで電車でいってました。」
「あと五分くらいしたら来るけど、多分俺とは逆方向だね。」
私は、彼の言葉に少しガッカリした。
同じ方向だったら、あんなことやこんなこと、、。
「そうですか。本屋、楽しんでください。」
「ありがとう。君も推し活とやら頑張れ。」
私は、少し恥ずかしくなった。
「あの、その、お、お名前とかって」
「俺はスバル。変な名前だからすぐ覚えられると思うよ。」
スバルは、少し笑いながら言った。
メガネ越しに、目尻に寄っている皺が見えた。
「スバルさん、かっこいい名前ですね。私はマフユです。」
「マフユさん。いい名前。あ、バスが来た。それじゃ、落し物には気をつけて。」
彼は、爽やかな笑顔でバスに乗って行った。
アニメイコで推しの素晴らしすぎるビジュアルを見たとき以外、スバルの爽やかな笑顔が頭から離れなかった。



