「おはよー」

私は教室へ入った。人が多いため暖かい。

「まっふー!おはよ!今日も遅刻じゃん」

「あはは、寝坊しちゃったよ。」

教室の出入口に1番近い席に座っている同級生のミヤビが、1番に話しかけてくれた。

「ミヤビ、島ちゃんなんか言ってた?私のこととか」

私はミヤビに、少し焦り気味に聞いた。

島ちゃんとは、私のクラスの担任だ。
本名は宮島アツシというのだが、

クラスの1人がそう呼び始めたのをきっかけにいつの間にか全員が「島ちゃん」呼びになっていた。

「え?ごめん私島ちゃんの話全く聞いてなかったから分かんない」

ミヤビは、右手の人差し指を自身の頬に当ててそう言った。ミヤビはそういう癖がある。

「ま、そうだよねー、島ちゃんの話面白くないし。」




「マフユ!遅いよ来るの!」

私がミヤビと話していると、廊下からユナがやって来た。

「おはよーユナー。今日もあの人見つけちゃって。」

「え?本当に?」

「ホントホント。珍しくスマホいじってたよ。」

私はユナに、スマホをいじる仕草を見せた。

「へぇー、そんな事もあるんだねー」

ユナには、気になるあの人については毎日のように近況を報告していた。

「明日こそ早起きして乗り合わせられるようにしようって思ってたのに祝日だったよ」

「え?待って。じゃあどこで鉢合わせたの?外?」

ユナは、少し怪訝そうに私に聞いた。

「あ、そうそう。そうなの。久遠町の駅前にいたの。」

「じゃあ、高校近いんじゃない?」

ユナは私よりも興奮しながら、机をバンバンと叩いた。

「ちょ、ユナ暴れすぎ。」

「だってだって、高校近いとか最高じゃん。放課後に会いに行けたりするし。」

まあ、確かにそれはそうだろう。
私は、ユナのその発言に納得した。