恋愛電車

居ても立ってもいられなかった。
私は、1度学校へ向かい、いつも通り授業を受けた後、誰よりも早く教室を出た。
ユナには申し訳ないが、今日は私の態度が悪かったかもしれない。

好きな男のためなら友情など気にしないなんて、私どうかしてるね。

心の中でそう思った。

久遠駅に到着するも、やはりスバルの姿は無い。

「もしかして…事故、とか？」

嫌なことを考えてしまった。
毎日見ていた彼の笑顔、落ち着く低音ボイス、シャツのいい香り。全てが闇に葬られたかのような感覚だった。

いや待てよ？

仮にもし、億が一、事故にあってしまったとして、最悪の状況だったとして、すぐにメールのアカウントが消えることはあるのだろうか。





最悪な事態は、起こっていないかもしれない。





「マフユさん！」

遠くから、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

まさか、そんな。

アニメや映画じゃあるまいし。

ちょっと疲れているのかもしれない。


私はそう言い聞かせて、声のする方向には向かずにそのままホームへ向かった。

「待って！マフユさん！」

幻聴じゃない。確かに聞こえた。

うん。きっとそうだ。

私は振り返った。

そこには、スバル君がいた。



「スバル、君」

「マフユさん、ごめん。」

彼は、直ぐに頭を下げた。







「…家庭の事情で、引っ越すことになった。それで、これを機に携帯も解約した。だから、ごめん。急に消えたから。」

「ううん。全然。…でも、引っ越すって、？」

「…もう、マフユさんと会うことは無い。出来ないと思う。」

頭が真っ白になった。
スバルとは、もう会えない。

「それで、連絡先交換したかったんだけど、まだ新しいアドレス分からないし、俺の家、結構人間関係にうるさいんだ。今度からは、携帯も監視されるみたいで。」


彼のその言葉で、最後の希望までもが瞼を閉じた。









「だからさ、最後に、言いたい。」