教室に着くと、どこかザワザワしていることに気づく。
「今日なんかあんの?」
隣の席の凪沢風花に尋ねると、風花は苦笑いして言った。
「今日席替えでしょ?」
あっ、そーか。
めんどくせぇー…。
はぁ…とため息をつき、バッグを机に置いて準備を始める。
僕の席は窓側の1番後ろ。
横6人縦5人の30人クラス。
男子は14人、女子は16人だ。
バッグから荷物を出して机の中にしまい、バッグをロッカーに入れる。
「なぁ風花、1時間目何?」
「数学だよ」
チッ…。
その言葉に、無意識に舌打ちをしていた。
「あはは…」
苦笑いしている風花。
「ほら、朝読書しよ」
あぁ…。
さらに苛立ち要素が増える。
イライラしながら文庫本を適当に開き、窓に目をやった。
水色の絵の具を塗りたくったような空に、マシュマロの雲がながれていく。
太陽の光が教室に差し込む。
朝の空はめちゃくちゃ綺麗…。
いい気分になっていた時。
「窓側の人眩しいからカーテン閉めてー」
一軍女共が言ってきた。
は?
なんで命令口調なんだよ、ふざけんな。
同学年だし、お前らの方が頭悪いだろ。
てめぇがやれ。
内心毒づきながら無視してページをめくる。
「ねぇ三上ちゃん、カーテン閉めて?」
すると、今度は三上梓(ミカミアズサ)という女が犠牲になった。
「えっ?あっ…は、はい…」
三上はいわゆる底辺で、女子の中で三軍。
怒りをぐっと堪え、僕も立ち上がる。
風花も立って、一緒にカーテンを閉めてくれた。
「あ、ありがとう…」
三上がお礼を言ってくる。
「別に」
「どういたしましてっ」
素っ気ない僕と、素直にお礼を言える風花。
ふふっと笑った一軍女共。
チッと舌打ちをすると、気まずそうに黙る。
はぁ…。
ったく、めんどくせぇ女共だな…。
「あ、お前もそー思う?」
ニヤッと笑って振り向いてきた千里那斗(センリナト)という男。
「なんだよ、那斗」
「いや別に?」
「今日席替えだからテンション上がってんのか?」
そう聞くと、ぎくりと肩を跳ねさせる那斗。
どいつもこいつも…。
席替えごときで騒ぎすぎだっつーの。
担任が入ってきて、ホームルームが始まった。
「席替えしまーす、席読み上げるから聞いててねー」
テキパキと指示を出す担任。
言われた通りの席に、机ごと移動させる。
床の線に机を合わせ、イスに座った。
ちらりと隣を見る。
__っ、え?
「よろしく」
み…三嶋!?
「こちらこそ…よ、よろしく」
ぎこちなく挨拶をして、前に向き直る。
っマジか…。
だる…。
正直言って前回の件があった以上、普通に考えてもう関わりたくなくなっていたのに…。
はぁ…と重いため息をこぼす。
後ろは風花で、前は天坂雪生(アマサカユキ)という二軍の女子。
これからの学校生活を想像して、ため息がまたこぼれた。