「紗奈?」

「二葉くん!もう自分で帰れるから、バイバイ!」

「え、紗奈!!」

泣きながら走って、走って、走った。分かってた。誰にでも優しい二葉くんが信じてくれないことなんか。

「はぁ、」

慌ててきちゃった。

ザー

あーあ、最近、雨降ってばかりだな。…私のせいだけど。

「ふぇ、泣」

こんなことで泣きたくなんかなかった。

「紗奈?」

え?

「遊、」

そこには遊がいた。傘を私の上にやって雨に濡れないようにしてくれる遊。

「どうした?そんな慌てて。」

「遊こそ、未那と帰ったんじゃないの?」

「あー、一回家着いて、今コンビニの帰り。」

へへっと笑いながらいう遊。でも私と目があった途端、顔が曇った。

「泣いてた、のか?」

「、」
…なんて言えばいいか、頭の悪い私には思いつかなかった。

「あのさ、俺んち寄る?話、聞かせて。」

「あ、…うん」

断れなかった。断る理由もない。

「ちょっと待ってて、タオル持ってくる。」

遊とは仲よかったけど遊の部屋には初めて入った。黒と白で統一されてて、なにより大人っぽい。

「はい、タオル。」

「あ、ありがとう…」

タオルを受け取り、濡れた髪を拭く。遊の家に来てから、ふと迷惑ではないかと言う事に気づく。

「あの、やっぱり私、帰ろうか?」

「え?なんで。俺は紗奈の話聞くために来てもらったのに。」

「あ、悪いかなって思って…」

「そんなのいいって。それに親いないからゆっくりしていきなよ。」

遊の親がいない…てことは2人っきり?!二葉くんがいるのに変な緊張に焦る。

友達と言っても一時期好きだった人だ。意識しないわけがない。二葉くんがいるのに、男の人の部屋に2人っきりでいていいのかな。

でも、遊だし、…。