彼は、微笑みながら、

「もし、彼との間に何が起こったとしても、ましてや、君が彼のもとに戻ってしまったとしても…。それでも、まだ迷いの見える君に気づかないふりで、遠くへ連れ去るなんてことは、とても出来なかったよ」

私は、どう言葉を返していいのかわからない。

「それに、ちゃんとこうして戻ってきてくれたじゃない。僕が、どれほど嬉しいかわかる?」

「もー…私は伝書鳩じゃないのよ」

「あはは、でも今ならストレートに言えるよ。僕は君のことをずっと見てきた。これからも見つめていたい。だから…一緒に来てくれる?」

私は、小さく頷くと、いざなわれるまま、初めて彼のアパートの部屋へ。

これから、どんな暮らしが始まるのだろう?

関西での暮らしも良かったが、子供の頃から小さな島で暮らすのを夢見ていたので、希望を胸に抱き、過去のことは、あのロングドライブで葬り去った…。


FIN