俺たちはホテルに場所を変えた。
指一本触れないと約束し、彼女を部屋に通した。
東京タワーの夜景をどうやら気に入ってくれたようだ。

薔薇の花束を渡すと、環奈という蕾が一気に咲き誇ったように満面の笑みを浮かべた。

夜景よりも輝いている環奈

そろそろ今日が終わる。
全てを話す時が来たようだ。

環奈は、俺を受け入れてくれるだろうか……
もし、名前を聞いて俺を思い出したなら……
あらゆる負の感情が押し寄せたが、迷いはなかった。

ふうっと息を吐き、彼女を見つめた。

「環奈さん、俺は、熊野御堂颯介です」