その場を慌てて取り繕い、再び競技場へと戻ってきた。
場内は満席だ。

ここでも彼女は、いろんな表情を見せてくれた。
目の前で繰り広げられる競技に夢中になり、身を乗り出す姿も、真剣な眼差しも、夜風に靡く(なびく)艶やかな髪も、靡いた髪の合間から覗く鼻筋の通った横顔も、目を輝かせ拍手する姿も、応援に力が入りギュッと握りしめる拳も、一挙一動を俺は見逃さなかった。

だが………

400mリレー決勝。
息を呑む環奈、真剣な顔で選手を見つめている。
俺自身も、直接見る選手の走りに夢中になった。
世界の頂点を決めるトップアスリートたちの戦いが、今まさに目の前で繰り広げられている。その光景に、俺の全集中は持っていかれた。

最終走者がゴールを切った時には全身が震えた。飛び上がって喜ぶ環奈と、何度も何度も手を叩き、抱き合って喜びを分かち合った。

環奈がはっとした表情で俺から離れる。
それで俺も我に返った。
しまった!競技に夢中になり過ぎてしまい、リレーに集中する環奈の表情を見逃してしまった。

でも、今の環奈のキラキラとした表情が全てを語っている。

胸の奥がじわりと熱くなった。