目の前には恋焦がれた愛しい女性の姿がある。凛としたその姿は、美しい輝きを放っていた。
一瞬視線を向けたが、その視線はすぐに他方へ向けられた。

まさか、バレたか?
いや、誰かを探しているようだ。

ズームアップするように彼女の姿が俺の視界に広がった。
俺はピタリと立ち止まる。

「こんにちは、花村環奈さん」

環奈は首を傾げている。

無理もない、外国人だと思っていたところに、日本人が現れたのだ。
どうやら、俺が熊野御堂颯介だということは気づいていないようだ。 

待てよ。もうすでに、彼女の中から俺の存在は削除されているのかもしれない……

いやいや、余計なことを考えるな。前を向け俺!

「今日は僕とお見合いのはずですが?」