「なぁ、サプライズ計画はどこまで進んだ?」

「世界大会のチケットも、ローストビーフ店も、ホテルも薔薇も手配した。あと指輪も」

「さらっと言うけど、凄いな、お前。大会のチケットなんか手に入れるのさえ困難なんだぞ。まさか、最終種目の特別席とか言わないよな?」

「そうだけど」

「…… 熊野御堂財閥のスケールにはついていけん」

「あとは、どうやって誘うかなんだが……俺は彼女にとってトラウマの根源だ。素直に会ってくれる気がしない」

「だろうな」

「俺、怖いんだ……」

「ホント、世話が焼ける奴だなぁ。だったらこうしろ。お前はゲイル・ベアーになれ」

「は? 外人? 俺に偽名を使えと? 」

「人聞きの悪いことを言いなさんな。熊野御堂颯介のイングリッシュバージョンだ」

「意味がわからん」

「颯介君、ゲイルは日本語で何だ?」

「ゲイルはGaleだよな? 疾風(はやて)か……そういうことか(はやて)ベアーはBearで熊、か」

「そういうことだ。仕方ない、俺の作戦を提供してやろうじゃあないか。というわけで、今夜飯奢れ。肉な」

「了解」

その夜、俺たちは都内の高級焼肉店で作戦会議を行った。