私はホテルのラウンジにいる。待ち合わせの15時になった。
姿勢を正して待っていると、ダークグレーのスーツを纏った長身スレンダーの男性を伴い、美紗都が現れた。

「ごめんね遅くなって」

「ううん、遅くなんかなってないわ」

「美紗都、そちらの方が?」

「そう、桐山さん」

「初めまして、桐山です。桐山法律事務所で弁護士をしております。花村さんのことは、美紗都から唯一無二の親友だと聞いております」 

「唯一無二って……美紗都、ありがとう」

目頭がじわりと熱くなる。

「桐山法律事務所の桐山さんということは……」

「私の父が代表を務めております」

「では、お父様の後を継がれるのですか?」

「そのつもりです」

「環奈、私たち結婚するの。環奈にはちゃんと二人揃って報告したかったから。せっかくの誕生日に時間を取らせてごめんなさい。誕生日、おめでとう」

「おめでとうございます」

「ありがとうございます。美紗都、謝らないで。私、凄く嬉しい。とっても素敵なプレゼントをもらったみたいでホント嬉しい」

「環奈、ありがとう」

「ねぇ、二人はどうやって知り合ったの?」

「お見合いよ」

「お見合い⁉︎ 」

「そう」

「両親が勝手に決めたお見合いだったんだけど……」

「私が美紗都さんに一目惚れしました。猛アタックです」

「もうやめて」

照れる美紗都が可愛らしくて、笑みが漏れる。