桜と直輝の押し問答は、店を出たあとも続いた。すでに閉館した水族館の前で。
「何で帰るなんて言うんだよ?俺がどれだけ待ってると思ってるの?」
と言い張る直輝に
「帰る。今日はごめんなさい。」
と深々と頭を下げることしかできない桜。
「ごめんなさい、ごめんなさいっていい加減にしろよ。俺、謝られてばっかりなんだけど。」
ガッと今までの中で一番強い力で桜は直輝に腕をつかまれていた。
自分の力じゃ振りほどけないぐらいの強さ。女の自分じゃ非力で手を振り回しても無意味な強さ。
「桜、いい加減にしろよ。お前、俺の彼女だろ?」
「彼女だけど……」
だったら、私の意見も尊重してよって言いたい。
でも、そんなこと言えない。
直輝が今までとは別人に思えてしまっている。男の人ってこんなに力が強いのって。
私の知らない人が目の前で顔を出している。
助けて……誰か……

