カフェでランチをしている間や水族館でイルカやラッコ、マンタなどを見ている間は、桜は直輝から「今夜どうする?」と尋ねられることはなかった。
デートの時は、だいたい桜の話が3割、直輝の話が7割なので、桜は「うんうん。」と頷きながら聞くことが多い。
自分のことを語るのがあまり得意ではない桜は、それで十分だと思っていたが、時折もう少し話したいなと思うこともあった。
「それでさ、夏合宿は海の方に行くんだよね。」
直輝はテニスサークルに入っており、夏には合宿が控えているとのことだった。
「どれくらい行くの?」
「一週間。だからその間会えないけど、ちゃんと連絡するからね。」
直輝の大学の話は、自分はそこにいないけど、いないならいないで楽しんでいるのも伝わってきていた。
それなのに直輝はどうして自分と付き合うのだろうか。大学にだって直輝のタイプの女の子はいるだろうに。
だから……直輝が自分と付き合ってくれることには、感謝しないといけないのだ。
学校でいまいち友達とすら上手く付き合えない自分と一緒にいてくれるのだから。

