花言葉〜青い春〜





****


土曜日の昼に桜は彼氏の直輝と約束していたので、朝10時から自室で支度を始めた。


部屋には菫もいた。どうしても服が決まらなくて、桜は菫を招き入れたのだ。


これも中学校から、桜がデートをするときの恒例行事で、菫は相手が直輝であろうと、嫌な顔はせずに付き合ってくれた。


むしろ菫から


「今日は選ばなくていいの?」


と聞いてくれたので、喜んで菫を招いたのだが。


最近、菫とぎくしゃくしているような気がしていたから、桜はいつも通りに心の底から安心していた。


「どれがいいと思う?ふたつ悩んでるの。」


一枚はミントグリーンの春ニットのワンピース。腰のところにセット品の白いベルトを巻く。


もう一つはベビーピンクのブラウスに紺色のハーフパンツ。ブラウスはシースルーの素材で中に付属のインナーを着るようになっていた。


「どこ行くんだっけ?」

「水族館。」

「じゃあこっちかな。春ニットはさすがにもう暑いだろうし。」


菫はベビーピンクのブラウスの方を手にした。


「それであの白いスニーカーを履いたら、歩くのがしんどくなる心配とかもないし。」

「わーい。ありがとう、菫ちゃん。」


桜は菫に飛び付きぎゅーっと抱きしめた。


「はいはい。重たいって。そういえば、あんまり遅くなるんじゃないわよ。お父さんが心配するから。」

「分かってる。」


と言いながら、桜は直輝に泊まることを断ることができていなかった。


怒らせるのが怖くて、拒否して嫌われるのが怖くて、「また今日の帰りに返事をする。」と答えてしまっていた。