桜は手を伸ばして真尋のコーヒーをつかんでいた。
「わ、私、別にコーヒーも飲めるもん!苺ミルク以外にも好きなものあるもん!」
真尋がさっきまで飲んでたとか、そんなこと考えられる程、桜に余裕はなかった。そのままコーヒーに口を付けて、紙パックがぺたんこになるまで、飲み干していた。
「おいっ!俺のコーヒー!せっかく成海にじゃんけんで勝って買ってもらったのに。」
今にも突っかかりそうな真尋に、桜は苺ミルクをドンと真尋の前に置いた。
「あなたこそ、その偏った考え方を改めた方がいいわよ。苺ミルクだって美味しいんだから。」
「嫌だ!俺は牛乳系の飲み物が嫌いなんだ!」
「今回は真尋が悪いよ。神谷、かっこよかったよ。」
成海が爆笑して桜に掌を見せたので、桜はそこに自分の掌を合わせて、ハイタッチした。
「でも、真尋のこと嫌いにならないでね。根はいいやつだから、多分。」
「多分ってなんだよ、多分って。」
真尋は不貞腐れて、プイッとそっぽを向いてしまった。
「ご馳走様でした。コーヒー、美味しかったです。」
桜は成海と真尋にぺこりと頭を下げた。
コーヒーが美味しかったのは本当だった。今まで何となく避けていたのがもったいないと思うぐらい。

