成海……もう帰ったかな?
部活が終わって、菫は他の部員と一緒に部室で着替えていた。
グラウンドの隅の一角に、プレハブの二階建ての建物が建てられており、そこが各運動部の部室になっていた。
2階が女子の部活が使う部屋となっており、陸上部女子は2階の角を部室として使っていた。
だいたいさ、待ってるっていったって2時間以上あるのよ。暇だし、待てるわけないよね。
そうやって、自分に言い聞かせて菫が部室から外に出ると、階下がやけに騒がしかった。
「なんの騒ぎ?」
先に着替え終えて、通路から下を見下ろしている理沙の横に菫も並んだ。
「サッカー部がふざけて水のかけ合いをしているの。生徒指導の先生に見つかったら怒られるのに、本当よくやるよねー。」
よくやるよねと言いつつも、理沙は楽しそうに笑いながら見つめている。
「ねぇ、一人サッカー部じゃない人いるけど。」
ユニフォーム姿の男子に部員に混じって、白い制服のブラウスと髪を濡らしている。
上から覗く菫を見つけるなり、
「すーちゃんお疲れ様!帰ろ。」
と手を振ってくる。
「えっ!?菫、どういうこと?宮田成海と知り合いなの!?すーちゃんってなに!?」
質問攻めの理沙に菫は「ごめん。」とだけ言い残して、猛ダッシュで階段を駆け下りていた。

